母の介護で疲れ果てた私
「介護する人」と「介護される人」のどちらかが我慢をする関係は、長期間続かないと感じています。
特に「介護する人」は、「介護される人」を大切に思う気持ちが強いほど、自分のことよりも相手のことを優先しがちで、いつのまにかストレスが積み重なっていきます。
私は、母の介護が必要になった時、母のことを優先して、そこに全てのエネルギーを注ぎました。フルタイムの仕事をこなしながら、介護をする生活を続けていくうちに、私はエネルギーを使い果たした感じになっていきました。大好きなはずの母に、つい、イライラした態度をとり、そんな自分に落ち込むこともありました。
でも、今は「介護される母」も「介護する私」もお互いに笑顔で過ごしています。
「介護される母」も「介護する私」も、笑顔でいられる環境を構築
母は、高次脳機能障害で視覚認知障害があります。
目の前の物に気づかない、一度に一つの物しかみることができない、物を見てもそれが何だか分からないなどの症状があります。目が悪いわけではなく、脳損傷の後遺症でそうなるのです。
例えば、食事の時、いつも皿に載ったおかずの右半分が残っていました。母の大好きなものが皿の右にあっても残すのです。皿の全体を認識できないためおこる症状でした。
母は、いままで当たり前にしてきたことができなくなったせいで、不安を感じ、何か行動する度に怯えていました。母は、手助けや介助さえあれば、安心して穏やかに毎日を過ごせます。
でも、見えないということは、生活のすべてに手助けや見守りが必要なのです。
そこで私がその役になりました。しかし、私が母の介護にエネルギーを注げは注ぐほど、私の時間はなくなっていきました。私の笑顔がなくなれば、母の笑顔もなくなります。私が疲れれば、母は私に気を使い遠慮して、私にやってほしいことを言わなくなりました。
まずは、私が笑顔でいないといけないのです。
主治医の先生から、ソーシャルワーカーさんを紹介してもらい、相談に行きました。先生は紹介状に現状を詳しく書いてくれていました。
ソーシャルワーカーさんは私に会うなり、「今まで、よく一人で頑張ってきたね」と言葉をかけてくれました。初めて会った人の前なのに、私は涙があふれでて止まりませんでした。
その後、たくさんの人たちに相談しながら、試行錯誤をしてきました。
その結果、主治医、ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、介護スタッフのみなさんすべて巻き込んで、母と私とお互いに笑顔でいる環境を整えることができたのです。
そう、私一人で全ての介護を抱え込むことをやめたのです。母の介護について全てを任うのをやめ、手分けすることに決めて、介護を他人に依頼することにしました。
母の食事を作ることだけは、私が担当しています。毎日、母の食べたいものを作り、朝の出勤前に1日分の料理を母の所へ届けます。そのために、私は、母の住んでいる所からスープの冷めない距離に引っ越しました。
毎朝「おはよう」と母に挨拶をしてから出勤するので、母の様子もわかります。
お互いに何か困ったことがあれば、いつでも歩いてすぐに駆けつけられる距離にいるという安心感も得られています。
そして、それ以外の介助については、私ではなく他の人達にお願いしました。
食事を取る時、着替えをする時、お風呂に入る時、日常生活での必要な介助全てを私以外の人に手伝ってもらっています。主治医の先生から、母の症状とそんな母に接する時の注意点を書いてもらい、ケアマネージャーさんや介護スタッフさんと共有しました。
また、毎朝顔を合わせる介護スタッフさんから、母の様子も聞いています。
母の介護を分担するようになってからは、私は自分の時間が確保できて、私自身のエネルギーを満たすことができます。私が笑顔になれば、母も笑顔になります。私が元気ならば、母もこうして欲しいと言いやすくなったのです。
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介護する人のエネルギー充足が大切
選択理論では、
他人の欲求充足のお手伝いをしながら、自分の欲求を充足すること
を責任の概念と説明しています。
例えば、私のお腹が空腹でぺこぺこの時、他人の空腹を満たすお手伝いをするのは難しいのですが、私のお腹が満たされているなら、他人の空腹を満たすお手伝いは簡単にできます。まず自分のお腹を満たさないと、他人の空腹の手伝いをすることは難しいのです。それなのに、私は空腹のままで、母の空腹の手伝いをしていたから、エネルギーがなくなっていったのでした。自分のお腹を満たすことは自分の責任なのです。
私が母の介護を一人で全てしているときは、私のエネルギーが切れている感じでした。
介護する私は、自分の欲求充足ができていないと、母の欲求充足の手伝いはできなかったのです。
分担介護になってからは、私は自分の時間が確保できて、私のエネルギーを満たすことができます。
自分の欲求充足ができていると、母の欲求充足の手伝いをすることができるのです。
大切な家族の介護を続けるためには、まず、介護する人のエネルギーを満たすことが大切なのです。
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